牡蠣工場

シアター・イメージフォーラムにて2月20日(土)よりロードショーほか全国順次公開

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イントロダクション

人々が織りなす豊かで複雑な物語

 舞台は、瀬戸内海にのぞむ美しき万葉の町・牛窓(うしまど)(岡山県)。岡山は広島に次ぐ、日本でも有数の牡蠣の産地だ。養殖された牡蠣の殻を取り除く「むき子」の仕事は、代々地元の人々が担ってきた。しかし、かつて20軒近くあった牛窓の牡蠣工場は、いまでは6軒に減り、過疎化による労働力不足で、数年前から中国人労働者を迎え始めた工場もある。
 東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきた一家は、ここ牛窓で工場を継ぐことになった。そして2人の労働者を初めて中国から迎えることを決心。だが、中国人とは言葉が通じず、生活習慣も異なる。隣の工場では、早くも途中で国に帰る脱落者も。果たして牡蠣工場の運命は?

牡蠣

小さな世界から垣間見える グローバルで巨大な問題

小さな世界から垣間見える グローバルで巨大な問題

 ロカルノ国際映画祭に正式招待された本作は、「珠玉の智慧に満ちた映画」「目から鱗の現代日本の姿」「想田監督の最高傑作」などと、世界の批評家から絶賛された。牡蠣工場という小宇宙に、グローバル化、少子高齢化、過疎化、第一次・第二次産業の苦境、労働問題、移民問題、そして震災の影響など、大きな問題が浮かび上がってくる。想田和弘が見た世界の「現在(いま)」と日本の「未来」とは?

牛窓について

「日本のエーゲ海」と呼ばれる牛窓は、古代からその名を知られ、万葉集では柿本人麻呂の作ともいわれる歌に詠まれている。菅原道真も歌を残している。中世には風待ち、潮待ちの港として栄え、朝鮮通信使の寄港地にもなった名勝地である。現在は岡山県瀬戸内市の一部となり、「過疎地域」に指定されている。

牛窓の 浪の潮さゐ 島響み 寄さえし君に 逢はずかもあらむ 伝 柿本人麻呂

TRAILER

COMMENTS

オレリー・ゴデ(ロカルノ国際映画祭プログラマー)

映画で世界を変えるなんて、無理なことかもしれない。
しかし想田和弘の映画は、「変わりゆく世界」の見方を教えてくれる。

平川克美(文筆家)

「大切なことは、いつも小さな声で語られる」。
本作の、カメラはそう言っているように思える。

港 千尋(写真家)

観察する「カメラ=身体」は記述の道具ではなく、
偶然性を受け入れ、変化する現場の一部となるくらい
ダイナミックで生き生きとしている。

DIRECTOR'S PROFILE

想田和弘 そうだ・かずひろ

映画作家。1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。93年からニューヨーク在住。NHKなどのドキュメンタリー番組を40本以上手がけた後、台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。 著書に「精神病とモザイク」(中央法規出版)、「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」(講談社現代新書)、「演劇VS映画」(岩波書店)、「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」(岩波ブックレット)、「熱狂なきファシズム」(河出書房新社)、「カメラを持て、町へ出よう 「観察映画」論」(集英社インターナショナル)、共著に「街場の憂国会議 日本はこれからどうなるのか」(晶文社)、「原発、いのち、日本人」(集英社新書)、「日本の反知性主義」(晶文社)など。最新刊「観察する男 映画を一本撮るときに、監督が考えること」をミシマ社より1月22日刊行予定。

フィルモグラフィー

『選挙2』
観察映画第5弾|149分|2013年

シネマ・デュ・レエル、MoMAドキュメンタリーフォートナイト、ドバイ国際映画祭、香港国際映画祭など正式招待

『Peace』
観察映画番外編|75分|2010年

東京フィルメックス・観客賞、香港国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭・ブイエン&シャゴール賞、韓国・非武装地帯ドキュメンタリー映画祭・オープニング作品

『演劇2』
観察映画第4弾|170分|2012年

ナント三大陸映画祭・若い審査員賞、釜山国際映画祭ほか正式招待

『精神』
観察映画第2弾|135分|2008年

釜山国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、ドバイ国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、香港国際映画祭・優秀ドキュメンタリー賞、マイアミ国際映画祭・審査員特別賞、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭・宗教を超えた審査員賞、ベルリン国際映画祭など正式招待

『演劇1』
観察映画第3弾|172分|2012年

ナント三大陸映画祭・若い審査員賞、釜山国際映画祭ほか正式招待

『選挙』
観察映画第1弾|120分|2007年

米国ピーボディ賞、ベオグラード国際ドキュメンタリー映画祭・グランプリ、ベルリン国際映画祭など正式招待、世界約200か国でテレビ放映

DIRECTOR'S NOTE

日常に潜む「変化」の歯車にじっと目を凝らす

 いつものことながら、『牡蠣工場』はひょんなことから生まれた映画である。
 牛窓は柏木規与子の母親の故郷である。その縁あってたびたび訪れるうちに、僕と柏木は牛窓がすっかり気に入ってしまった。そして数年前から夏の休暇を牛窓で過ごすようになった。そこで漁師さんたちと出会った。
 僕は以前から漁師の世界に関心を抱いていた。
 人間は、特に日本人は、海の幸をよく食べる。だけど漁師の生活は経済的に厳しく、後継者の不在に悩み、数もだんだん減っているという。実際、牛窓でみかける漁師の大半はおじいさんで、後を継ぐ人も稀である。
 映画のように、観客がいない(需要が少ない)から産業として廃れていくのなら、まだわかる。だけど、水産物への需要はこれからも増えそうなのに漁業が廃れていくのは、いったいなぜなのだろう。そんなことをぼんやりと考えていた。
 だから漁師さんたちに出会ったときは、漁師についての映画を撮る絶好の機会が訪れたと感じた。だが、撮影を快諾されて知り合った漁師さんの「仕事場」についていったら、そこはなんと牡蠣工場だった。僕は船で魚を獲る「普通の漁師」を撮ることをイメージしていたので、やや面食らった。
 しかし観察映画には「予定」もなければ、そこから外れる「想定外」もない。事前のリサーチや打ち合わせ、台本もない。予定調和や先入観を排し、そこで起きることを虚心坦懐に観察し、その結果を映画にするのみである。
 僕らはすぐさま撮影を開始し、牡蠣工場の魅惑的な日常にのめり込んでいった。
 撮影を始めて間もなく、工場に貼られたカレンダーの脇の紙片に「9日、中国来る」と書き込まれているのを見つけた。また、工場を継ぐ漁師が、東日本大震災のため宮城から牛窓へ移り住んだ人だということを知った。
 そのかすかな不協和音から「物語」が自然に立ち上がっていった。
 本作では、多くのドキュメンタリーが好んで扱うような、苛烈な貧困も搾取も社会の不正義も描かれていない。世界を揺るがした大きな事件の痕跡はかいま見えるが、事件そのものが目の前で起こるわけではない。そこに映し出されるのは、愛すべき漁師や労働者たちの淡々と続く地道な日常である。
 にもかかわらず、本作は「変化」についての映画だと僕は解釈している。
 社会が、時代が、少しずつ変化していく。変化の歯車の動きは、その変化が本質的であればあるほど、突発的な大事件の渦中ではなく、日常生活の中でゆっくりと起きるものだ。
 変化のスピードは、誰も気づかないくらいゆっくりとしている。うっかりしていると見逃してしまう。けれども心を澄まし、じっと目を凝らしていると、ときおり「がくっ」と音を立てて歯車が回転する瞬間に出会えることがある。僕は、この映画を作る過程でその瞬間に居合わせ、目撃し、記録できたような気がしている。
 世界は往々にして、入れ子構造になっている。牡蠣工場という小さな世界を覗いてみたら、そこにより大きな世界の縮図が見えた。
 僕にはそんな気がしている。

THEATER

地域 劇場名 電話番号  
北海道 苫小牧シネマトーラス 0144-37-8182 5月7日(土)〜
山形 フォーラム山形 023(632)3220 上映終了
宮城 フォーラム仙台 022(728)7866 上映終了
福島 フォーラム福島 024-533-1515 上映終了
東京 シアター・イメージフォーラム 03-5766-0114 上映終了
東京 アップリンク 03-6825-5503 上映終了
東京 ユジク阿佐ヶ谷 03-5327-3725 7月2日(土)〜15日(金)
神奈川 横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 上映終了
埼玉 深谷シネマ 048-551-4592 5月8日(日)〜14日(土)
群馬 シネマテークたかさき 027-325-1744 5月14日(土)〜27日(金)
長野 松本シネマセレクト 0263-98-4928 上映終了
静岡 シネ・ギャラリー 054-250-0283 上映終了
愛知 名古屋シネマテーク 052-733-3959 上映終了
新潟 シネ・ウインド 025-243-5530 上映終了
石川 シネモンド 076-220-5007 5月28日(土)〜
福井 福井メトロ劇場 0 0776-22-1772 6月18日(土)〜
大阪 第七藝術劇場 06-6302-2073 上映終了
京都 京都シネマ 075-353-4723 5月7日(土)〜20日(金)
兵庫 神戸アートビレッジセンター 078-512-5500 上映終了
豊岡劇場 0796-34-6256 上映終了
岡山 シネマクレール丸の内 086-231-0019 5月14日(土)〜27日(金)
広島 横川シネマ 082-231-1001 上映終了
シネマ尾道 0848-24-8222 上映終了
山口 山口情報芸術センター 083-901-2222 7月23日(土)〜24日(日)、29日(土)〜30日(日)
愛媛 シネマルナティック 083-933-9240 上映終了
福岡 KBCシネマ1・2 092-751-4268 上映終了
大分 シネマ5 097-536-4512 上映終了